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平成22年(2010年)


2月24日、暴走したシャチが飼育員を殺害する。
Tilikum
米国フロリダ州オーランドのマリンパーク「シーワールド」で飼育下にあった「ティリクム」という名のシャチ(当時28歳)が、トレーナーのドーン・ブランショー(40歳)を、ショーの直後に水に引きずり込んで溺死させるという事件が起こった。シーワールドは特にシャチのショーに力を入れているマリンパークで、ティクリムはこの園で7頭飼われているシャチの中では、特に最大級の個体(体重5440kg)だった。(同グループであるシーワールド・サンディエゴ(カリフォルニア州)はシャチを10頭、シーワールド・サンアントニオ(テキサス州)ではシャチを5頭飼育しており、このグループだけで全世界で飼育されているシャチの飼育数46頭(※2016現在)の約半分を保有していることになる。シーワールドでは舞台上のシャチのことを、創業時のシャチのスターの名にちなんで“シャム(Shamu)”と呼ぶ)
シャチは「とても頭が良く、人間を襲うことは決して無い」と言わる動物であるが、“事故で”人間が傷つけられる出来事は稀に起こっている。だが、それらの“まれ”な“事故”と比較しても、今回の事件を起こした「ティリクム」は特別な個体であると話題になった。これまでこのシャチは過去二回も「人が死亡した事故」に関与していたからである。(Tilikumとはチヌーク族の言葉で「ともだち」という意味)
(1).1991年、カナダのマリンパーク「シーランド・オブ・ザ・パシフィック」で、誤って水の中に落ちた飼育員アルバイトのケルティ・バーン(21歳)を、3頭のシャチがボールで遊ぶようにじゃれて(もしくは小突き回して)、死亡させるという事件が起こった。この内の一頭がティリクムで、この事件が元でシーランドは廃業した。1年後にティリクムはシーワールドに購入され、フロリダへやってきた。受け入れたシーワールド・オーランドでは既にこの時点でティリクムのことを「殺人歴のあるシャチ」とし、一緒にプールに入ってショーの練習することを忌避したという。

(2).1999年7月6日朝、プールで死んだ男性が裸の状態でティリクムの背中の上にいるのが発見された。何が起こったのかは定かではないが、この男性は前日に客としてシーワールドに入場した一般男性(27歳)で、夜までどこかで隠れ、人がいなくなった深夜に自分でプールに入って、低体温症で死んだと見られている。死因はシャチではなかったが、男性の身体には死後にティリクムが付けたと思われる傷も多数あった。

(3).2010年2月24日、 「シャムとお食事」というショーの後で、プールに背を向けて客と話していた(別の情報では「他のシャチの頭をなでていた」もしくは「ティリクムの頭をなでていた」)トレーナー(ドーン・ブランショーBrancheau、“ブラチョワ”とも)の後ろからティリクムが飛び上がり、彼女の腰の付近(別の情報では「上腕」あるいは「ポニーテールにした髪」)をくわえて水の中に引きずり込んだ。他の飼育員たちが彼女を助けようと手を尽くしたが、シャチが高速で泳ぎ回り、彼女を盛んに振り回すのでそれは果たせず、ようやく隔離用の治療用プールに引き込んで彼女を解放することができた。すでに彼女は死亡しており、公式な死亡原因は「溺死」とされたが、身体には深刻な外傷も多数あった。シーワールドは事故の原因を、初め「誤って彼女がプールに落ちた」「ティリクムは彼女のポニーテールの髪に反応して攻撃した」と発表したが、これは一般的には虚偽だと判断されてシーワールドは非難されることとなった。だが彼女が「ショーのときティリクムに与えるはずだった魚を与えそびれた」「ティリクムがこの日最初から不機嫌だった」ことは事実なようである。専門家によるとティリクムが決して彼女を「お食事の対象とした」のでなく、ただ「手荒く扱った」だけで「このシャチは通常の状態では無かった」とのことである。
BlachFish事件によりシーワールドは激しい非難にさらされたが、園はティリクムをしばらく隔離したのち、再びショーに参加させることに決めた。一説にその理由を「シャチは購入・維持に一頭5億近くもかかるため」「ティリクムは20頭もの子・孫を産した優秀な個体であるため」とされた。彼は現在でもシーワールド・オーランドで人気の高いスターである。

この事件を元に3年後、『BlackFish』(監督ガブリエラ・カウパースウェイト、2013年)というドキュメンタリー映画が作成された。
映画は動物愛護の観点に立って「シーワールドの環境は、シャチという巨大な動物を飼うにはあまりに酷い狭さである」、「ティリクムは30年に渡る飼育の内に精神に深刻な傷を負った」、「子供のシャチが捕獲される様子はとても残酷である」、「ショーという人間の娯楽のために罪のない野生の動物を犠牲にするべきではない」ということを主張したものであるが、この映画は大きな議論を巻き起こした。
「狂犬やヒグマは人を襲ったらすぐに処分されるのに、シャチは特別扱いか」、「シャチには罪は無い」、「人間よりもシャチの方が高等な生物である」、「水族館で芸を披露する動物は、奴隷制度と強制的苦役を禁じた合衆国憲法第13条修正で保護されるか」、「シャチはドーン・ブランショーさんのことをどう思っていたのか」、「この事件に対してシーワールドは従業員と飼育動物のどちらをも守ろうとしなかった」、「事件によってシーワールドは社会的な関心を浴びて入場者が増えた」、「ティリクム個人が特異な個体なのか、否か」、「一度人間の味を覚えた野生動物はふたたび人を襲う」、「ティリクム某は故意にやったのではないか」、「ティリクムの娘であるカサカも危険な事故を起こそうとした経歴がある。シャチの危険は遺伝される」、「実際シャチイルカクジラってどれくらい頭が良いのか」、「シャチが先天的に人を襲わない動物であるという信仰は真実なのか」、「トラウマ映画『オルカ』の「シャチは復讐する相手の顔は決して忘れない」というのは本当だったのか」、「イルカ猟・調査捕鯨は廃止されるべきである」、「動物園・水族館には抜群の教育効果があるのにそれを廃してもいいのか」、「自然下では80歳ほどの寿命のあるシャチが飼育下では30歳で高齢者である」、「シャチは訓練しづらい」、「自然は人間のためにあるのではない」、「シャチの幸福はどこにあるのか」、「長年飼育されてきたシャチが突然自然下に放たれて生存できるはずがない」、「イルカやシャチはショーの訓練を人間と共に存分に楽しむことができる優しい生物である」、「シャチやイルカと飼育員が固い絆で結ばれている幸福なマリンパークは数多くある」、「多種多様の水棲生物がストレス無く生存できる未来の水族館のあり方とは」、「大阪名古屋は鯱でモツ」

この事件によって、シーワールドが蒙った損益について、プラスとマイナスの双方に矛盾するいくつかの情報がある。

2015年の11月に、BlackFish効果によってシーワールド・サンディエゴで「シャムのショーを徐々に廃止して、教育的なプログラムに置き換える」という発表があった。

2016年の3月に、推定34歳のティリクムが肺の細菌感染症で危篤状態にあるというニュースがあった。



11月23日、延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件。
北朝鮮が韓国を砲撃。




◆2010年のテレビ番組
NHK大河ドラマ(第49作)…『龍馬伝』
NHK朝の連続テレビ小説…(第82作)『ゲゲゲの女房』、(第83作)『てっぱん』

◆2010年の映画
『オーシャンズ』(1月)、『Dr.パルナサスの鏡』(1月)、『時をかける少女』(3月)、『ザ・コーヴ』(7月)、『借りぐらしのアリエッティ』(7月)

2010年の流行語大賞