<表紙/浜名湖の魚/うなぎ/かつお/はも/ひらめ/どうまん>
冬の魚
-『食材魚貝大百科④』に所収-
とらふぐのウンチク
・フグ目フグ亜目フグ科トラフグ属。学名は「Takifugu rubripes」。・「Takifugu」と書いて「トラフグ属」と読むが、属名の由来となった「タキフグ」という魚がいる。東南アジアからアフリカまでのインド洋に広くいる魚で、日本には棲息しない。が、温暖化による影響か2009年に山口県萩市で初めて日本でも捕獲され、2021年時点で4件の発見が報告されている。(うち3件が山口県で1件が鹿児島県)。タキフグは25cmほどになる魚で、模様が派手なため観賞用としては盛んに輸入されている。記載者はマルクス・エリエゼル・ブロッホ(1786年)であるが、名前に日本語が関係があるかどうかよくわからない。(ネット上に情報がほとんど無い)。・「フグ科 Tetraodontidae」の名前はアフリカにしかいない淡水フグである「Tetraodon」に由来している。「4本の歯」の意味。テトラオドン属には、テトラオドン・ドゥボイシィ、テトラオドン・リネアートゥス、テトラオドン・ムブ、テトラオドン・ミウルス、テトラオドン・パストゥレイタス、テトラオドン・ショウテデニィの6種がいる。すべてアフリカにしかいない。東南アジア産の「テトラオドン・スバッティ」はテトラオドン属ではないらしい。・日本には50種ぐらいのフグ(138種とも141種とも)がいるが、食用にしてもよいと認められているフグは22種。
虎河豚、烏河豚、草河豚(※一般に食べないフグ)、小紋河豚(※岩手・宮城の一部で捕れたコモンフグは食用が禁じられている)、彼岸河豚(※岩手・宮城の一部で捕れたヒガンフグは食用が禁じられている)、潮際河豚、真河豚、目河豚、赤目河豚、縞河豚、胡麻河豚、加奈河豚、白鯖河豚(※無毒)、黒鯖河豚(※国内のクロサバは無毒)、縒糸河豚(※無毒)、三彩河豚(※日本にはいない)、石垣河豚、針千本、人面針千本、鼠河豚、箱河豚、梨河豚(※取り扱いが厄介なので香川県では「特別ふぐ」と呼ばれる)。・絶対に食べてはいけないふぐは、毒サバフグ、北枕、星河豚、虫河豚、小紋ダマシ、仙人河豚、模様河豚。・食べられるかどうかわかっていないふぐもいる。
さざなみふぐ、和紋ふぐ、七宝ふぐ、化粧ふぐ、たきふぐ、熊坂ふぐ。食べない方が良い。・フグ毒(テトロドトキシン)、麻痺性貝毒(サキシトキシン)、シガテラ毒(シガトキシン)、下痢性貝毒(オカダ酸、ディノフィストキシン)、アオブダイ毒(パリトキシン)等をまとめて「マリントキシン(魚介毒)」と呼ぶ。マリントキシンによる食中毒のうち、事件数の80%、患者数の60%を占めるのがフグ毒である。(※参考;食べて危ないマリントキシン)・ふぐ調理師免許は自治体毎(県単位)で与えられる。・ふぐ調理師の資格試験は学科試験と実技試験があり、東京都の試験では、実技試験でフグの種類鑑別(3分)、フグの内臓の識別、毒性の鑑別、およびフグの処理技術(20分)が試される。・東京都のふぐ調理師試験の受験資格
「東京都知事の免許を受けたふぐ調理師の下で、ふぐの取扱いに2年以上従事した者であること」または「ふぐの取扱いに2年以上従事した者と同等以上の経験を有する者」。埼玉・滋賀・鹿児島・神奈川のふぐ調理師・庖丁師の免許を持ち、調理師免許を有する者は、東京都の講習を受講すると、東京都ふぐ調理師免許が与えられる。・舘山寺温泉で「遠州灘ふぐ調理用加工協同組合」が結成されたのは平成15年(2003年)。・かつてトラフグとカラスフグは、腹の大きな紋と、同等な味、毒部の共通性により同じものとして扱われていたが、昭和24年に農林省水産試験場の阿部宗明博士によって「カラスフグ」の和名と「Takifugu chinensis」の学名が付与され分けられた。・実際はトラフグは70cmまで成長するがカラスは55cmまでである。カラスはふつう大紋以外の紋は少なく尻ビレが黒い。トラフグの方が大柄で身が多くて、味が少し濃いとされるため、分類以前にも漁場では(尻ビレ他によって)「クロ」「シロ」と呼び分けられ、扱いに差があった。(それでも他のフグに較べれば値が高い)。太平洋にはカラスは棲息しない。・トラフグは養殖により個体数が維持されたが、やや価値の劣るカラスフグは保護されることなく乱獲され、2014年に「絶滅危惧種ⅠA(近い将来絶滅する可能性が非常に高い種)」に指定された。