あゆのウンチク
・キュウリウオ目キュウリウオ科アユ亜科アユ属。
・学名は「Plecoglossus altivelis」。※pleco=「襞になった/捩れた/折り曲がった/編む」、glossus=「舌筋/頤/舌」、alti=「高い」、velis=「帆」の意。
・「altivelis(高い帆)」の学名(種小名)を持つ魚は他に、シモフリタナバタウオ Calloplesiops altivelis、サラサハタ Chromileptes altivelis、タキゲンロクダイ Coradion altivelis、ホタテエソ Pseudotrichonotus altivelis がある。
・少し前までアユは「サケ目サケ亜目アユ科」だったが、2016年頃に「キュウリウオ目」に分類し直された。
・この分類の変化は一度になされたものではなく、ネット上でも「サケ目キュウリウオ科アユ属」とか書いてあるところもたくさんある。
・『日本大百科全書』(1984〜94年)には「ニシン目アユ科」と書いてある。
・「アユはアユ科で一属一科をなす」と書いてあるサイトも多いが、これも見直しが図られていて、2024年現在は「キュウリウオ科アユ亜科」。
・アユ等のキュウリウオ一族の分類の見直しを提唱したのは、カナダのジョセフ・シーザー・ネルソン博士(2011年没)。
・あゆを表す漢字。「鮎」「香魚」「年魚」「魚+條」「細鱗魚」「銀口魚」「国栖魚」「剃刀」。
・漢字の「鮎」は音読みで「ネン/デン」と読むが、この読みを使った熟語はほとんど存在しない。※珍しい例外・・・「瓢鮎図」(ヒョウタンでナマズを捕る人を描いた絵)
しかし鮎の異名「年魚」はこの読みに由来していると思われる。
・中国語では「鮎」はなまずのことで、アユを表す漢字は「香魚」。
・最大で30cmになるとされるが、一般にそんな超大型は滅多に見られず、20cm前後が「大きなもの」とみなされる。
・秋葉ダムができる前の天竜川上流では、秋葉参りの帰りに食べる「尺アユ」(30cmぐらいの鮎の塩焼き)が名物だった。
・四国の四万十市郷土博物館に42cmの鮎のホルマリン漬け標本があったが、劣化が激しくて数年前に廃棄されてしまった。
・鮎の色。黄色みがかかった青緑色の美しい体に、胸びれ後方の体側に鮮やかな黄色の斑点がある。脂びれと尻びれ縁辺も鮮やかな黄色からオレンジ色をしている。
・鮎は淡水の河川の中流域から上流域に棲み、秋の産卵期になると河川の下流(河口から中流域にかけての部分)に下って産卵する。およそ2週間で孵化すると、稚魚は流れにのって海水域(しかし川からの淡水の影響の大きな部分)まで行き、そこで育つ。早春(2月〜3月)にシラスから稚鮎となった鮎は川を遡りはじめる。
・天竜川ではむかし諏訪湖まで鮎が遡上していたが、1935年(昭和10年)の泰阜ダム(長野県下伊那郡泰阜村)の建設によって途絶えた。このダムには魚道が設けられたというが、古い時代の設計であまり用をなさなかった。魚道のない1952年(昭和27年)の平岡ダム(長野県下伊那郡天龍村)・1956年(昭和31年)の佐久間ダム(静岡県浜松市天竜区)の建設以降、泰阜ダムの魚道はまったく使われていない。1958年(昭和33年)の秋葉ダム(静岡県浜松市天竜区)にも魚道は設けられなかったが、1976年(昭和51年)建造の船明ダム(静岡県浜松市天竜区)にはかなり秀れた魚道が備えられたため、現在は秋葉ダム下の白倉川までは天然の鮎が遡上できる。(しかし天竜川下流でも釣り人向けの稚アユの放流が盛んに行われている)
・ダム湖では一般にアユ釣りをしない。いないことはないがすぐにアユは清流を探してそこに入ってしまうため、ダムのある大河のアユ釣りはふつう支流でされる。
・産卵期を迎えたメスは川を降るが、これを「落ちアユ」という。産卵にそなえて脂がのっていて(脂質含量6〜7%。夏の通常のアユは4%)実はとてもおいしい。産卵期のアユ(のオス)は褐色が強い体色になるので、「錆鮎」ともいう。オスもメスも錆るが、ほぼ黒色になるのもいる。これも錆アユには独特の風味があっておいしい。
・雌アユは産卵するとまもなく死ぬ。雄アユはもっと先に死ぬ。大体のアユは1年の寿命のため「年魚」と呼ばれるが、まれに生き延びるアユもいて「二年鮎」「通し鮎」「冬至鮎」「泊り鮎」「古背」等と呼ばれる。年を越える鮎はほとんどがメスで、オスはいない。
・鮎の卵の孵化には、秋の暑さが大きく影響する。暑い秋だと早く産まれ、涼しい秋だと遅くなる。大体18℃前後の水温が適温。
・鮎の孵化は、なぜか必ず夜である。18時頃から始まるが一番多いのは20時前後で、24時頃まで続く。
・仔の鮎にはなぜか走光性がある。孵化が夜におこなわれるのは、仔鮎は明るい方に向かってしまうので捕食者に見つかってしまう危険を少なくするための進化だといわれる。シラスのアユは光に向かう習性があるのに、5時間以上日光(明るい光)を浴びると死んでしまう。
・エチゼンクラゲの大発生のあった年は鮎の遡上が少ないといわれる。近年のクラゲ大発生は、2005年・2009年・2024年。(2006年、2007年、2021年も少し多かった)
・鵜飼いは『古事記』の神武記にも載っているとても古い漁法。