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浜松の諸寺の中で、舘山寺は鴨江寺・龍譚寺・奥山方広寺に次ぐ知名度のあるお寺です。 舘山寺は大都市浜松きっての保養地としてその存在を知られており、舘山寺町の町名は古刹“舘山寺”によっているからです。しかしながら実際のところ、舘山寺というお寺は観光名所にしてはいささか小さすぎるお寺であります。来て見て歩いてみて、それほど楽しいお寺ではありません。このお寺のどこに価値があるというのでしょう。 実は! このお寺の高名はこのお寺自身の要因によるものではないのです。このお寺は名の知れたお寺でありながら、観光目的以外でお寺を訪れる人が少ない為に(※世のほとんどのお寺は観光よりももっと大事な仕事をたくさん持っています)大きなお寺となる必要が無かったのです。 中嶺山舘山寺というお寺の一番の魅力は「景勝地にあるから」で、決して「一般の人」が「一般の目的」(=墓参)で訪れるようなお寺ではありません。また、「文化的・歴史的な関心から見に来るようなお寺」でもありません。せいぜい温泉探訪の折にふらりと訪れた湯治客が“湯聖”「弘法大師」の名前を聞いて、「あら、こんなところにも」と、ほんのちょっと興味を湧かせるぐらいなところでしょう。弘法大師伝説は全国いたるところにはびこっているのです。お寺そのものに価値があったのなら、弘法大師がここでもっとめざましい偉業をしていたのなら、このお寺はもっともっと大きくなっていたでしょう。でも、弘法大師はこの舘山寺で何もしませんでしたし、役行者も西行法師も源頼朝もしかりです。今も昔も舘山寺温泉の一番の観光資源は「景色」で、ようやく60年前に地元の人たちの熱心な努力により、「温泉」が加わりました。かんざんじ温泉の魅力は、決してこのお寺にはありません。 観光地の中核であるものとされながら、観光資源として大きなものになりえないという矛盾がこのお寺にはあります。 当のお寺は自分自身を「とても歴史のあるお寺」だと謳っています。 曰く「弘法大師が開創し」、「弘法大師が修行した洞窟(穴大師)があり」、「西行法師が訪れたこともあり」、「源頼朝やコ川家康が関わったこともあり」、「明治の動乱の影響を色濃く受け」、「山頂の大観音は今でも篤い尊崇を受け」、「縁結び地蔵は恋愛のパワースポットである」と。 だが、それらのひとつひとつの出来事について詳細に語られることはありません。 「舘山寺の歴史」について本で調べようとすると、あまりに記されている事が少なくて困ってしまいます。 左の文章は、平成7年に庄内公民館が編集した地誌の中にある「舘山寺」の紹介文と、境内にある案内板の文章です。なんと漠然とした文章でしょう。現地案内板の方が読んでて面白いのです が(それはお寺独自の主張および願望がわずかに込められた文章だからです)、実 のところ上のピンク色の簡潔な文章程度の内容が一般的に本などに書かれている内容で、図書館で調べようと思っても行ってもこれ以上の情報が得られることは ほとんどない。舘山寺は 「浜名湖一の観光スポットのひとつ」なのですが、実は歴史的な細かいところのほとんど隠されているお寺なのです。 お寺自身が「舘山寺は何度か戦乱に巻き込まれた」と言っています。その折りに貴重な史料が失われてしまったのかもしれません。あるいは寺伝などが残ってい るのかもしれませんが、お寺は独自のホームページ等を作ってませんし、お寺によって発表された寺史などがあるわけでもありませんので現地の案内板以上のこ ともわかりません。現地の観光協会のサイトに載っている解説もとても簡潔なものですし、浜松で歴史の本をたくさん書いている神谷昌志氏や御手洗清氏も、御本の中で(穴大師の伝説や古写真について触れることはあっても)歴史的な舘山寺についてほとんど触れることをしなかった。 実は舘山寺は、なぞにいっぱい包まれているお寺なのです。 舘山寺の何がナゾなのか。 それを列挙してみましょう。 (1).本当に弘法大師が建てたのか? (2).本尊の「福一満願虚空蔵菩薩」とはなにか? (3).本当に源頼朝が関わっているのか? (4).なぜ「檀家の無い寺」なのか? (5).昔の寺域はどうなっていたか? (6).「中嶺山」とはどういう意味? (7).中国蘇州「寒山寺」との関わり。 (8).江戸時代の舘山寺の評判。 (9).「穴大師」の不思議。 (10).「縁結び地蔵」のナゾ。 (11).愛宕神社の由来。 (12).「奥の院」とは (13).「舘山八景」について (14).廃仏毀釈で「廃寺」となった理由。 (15).廃寺にされていた間、どういうことが起こっていたか。 ・・・結局のところ、舘山寺はそれなりにささやかな魅力のあるお寺であったのですが、ここ百年ぐらいの間に人によっていろいろとごてごてとしたものを付けられ、いびつなスポットになっていったのだ、というおはなし。 ★参考できるサイトさん★ 『珍寺大道 中』〜舘山寺〜 |
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